QC検定2級 実験計画法

  1. 勉強法
    1. QC検定2級 他の記事
  2. フィッシャーの3原則
  3. 一元配置分析
  4. 二元配置分析
    1. 繰返しなし
    2. 繰返しあり
  5. 有効繰り返し数について
  6. 回帰分析・相関分析
    1. 重要語句
    2. 相関係数
    3. 最小二乗法
    4. 回帰式の分散分析
    5. 無相関の検定
  7. 参考文献

勉強法

問題演習を通して,次の状態を目指す

  • (must)各パターンの構造式をイメージでき,分散分析表を書ける
    • 各平方和の計算ができる(修正項を使用した公式は必須)
    • それぞれの平方和の自由度が分かる
  • (want)各水準の平均値や各データの信頼区間の式がイメージできる
    • 自由度$\phi_e$のt分布が出てくる
    • 有効繰り返し数$n_e$が計算できる(田口の公式)

QC検定2級 他の記事

QC検定2級に関して、他の学習事項についても下記にまとめている。

単元難易度
重要語句(実践編)1
重要語句(手法編)2
信頼性工学1
管理図2
抜取検査2
検定/推定 回帰分析3
実験計画法3

フィッシャーの3原則

  • 無作為
  • 繰り返し
  • 局所管理

一元配置分析

1つの因子に対して、$a$個水準$A_1, A_2, \cdots A_a$を選び、水準間で違いがあるかの比較する手法である.
次の分散分析表を書けるように準備する.

要因平方和S自由度分散F比検定
因子$A$$S_A$$\phi_A = a-1$$S_A/\phi_A$$V_A/V_e$$F(\phi_A, \phi_e; \alpha)$
誤差$e$$S_e$$\phi_e = a(n-1)$$S_e/\phi_e$
$S_T$$\phi_T = an-1$
  • データの構造式: $x_{ijk} = \mu + a_i + \epsilon_{ij}$
    • 意味:データ=総平均+$A_i$の効果+誤差
    • $\epsilon_{ij}$は,サンプリング誤差,測定誤差,環境条件を含んでいる
  • 平方和分解:総平方和は水準間平方和$S_A$と残差平方和$S_e$に分解できる
    • $S_T = S_e + S_A$
  • 平方和の計算法
    • 修正項(変動平均値)$CT = \frac{T^2}{an}$
      • 修正項CTは”Correction Term”の略、値は「変動の平均値」になる
    • $S_T = \sum_{i=1}^a \sum_{j=1}^b x_{ij}^2 – CT$
    • $S_A = \sum_{i=1}^a \frac{T_{A_i}^2}{n} – CT$
    • $S_e = S_T – S_A$
  • それぞれの自由度
    • 偏差の和が0になるため、足し合わせた数から-1する
    • $\phi_T = an -1$
    • $\phi_A = a -1$
    • $\phi_e = \phi_T – \phi_A = a(n-1)$
  • 水準間分散$V_A$と残差分散$V_e$
    • 水準間分散$V_A = S_A / \phi_a$
    • 残差分散$V_e = S_e / \phi_e$
  • F値を計算する
    • $F = \frac{V_A}{V_e}$ を計算する
    • $V_A$が$V_e$に比べて大きければ、つまり$F値$が大きければ、因子Aの効果がある可能性が高い

二元配置分析

繰返しなし

交互作用のない$A, B$の水準の影響度を検定する.
$A, B$に交互作用があるときは、繰返し実験が必要なため、「繰返しあり」の二元配置分析法を用いる.
次の分散分析表を書けるように準備する.

要因平方和S自由度分散F比検定
要因$A$$S_A$$\phi_A = a-1$$S_A/\phi_A$$V_A/V_e$$F(\phi_A, \phi_e; \alpha)$
要因$B$$S_B$$\phi_B = b-1$$S_B/\phi_B$$V_B/V_e$$F(\phi_A, \phi_e; \alpha)$
誤差$e$$S_e$$\phi_e = (a-1)(b-1)$$S_e/\phi_e$
$S_T$$\phi_T = an-1$
  • データの構造式:$x_{ij} = \mu + a_i + b_i + \epsilon_{ij}$
    • 意味:データ=総平均+$A_i$の効果+$B_i$の効果+誤差
  • 平方和の計算法
    • 修正項(変動平均値)$CT = \frac{T^2}{ab}$
    • $S_T = \sum_{i=1}^a \sum_{j=1}^b x_{ij}^2 – CT$
    • $S_A = \sum_{i=1}^a \frac{T_{A_i}^2}{b} – CT$
    • $S_B = \sum_{j=1}^b \frac{T_{B_j}^2}{a} – CT$
    • $S_e = S_T – S_A -S_B$
  • 最適条件:水準$A, B$それぞれで一番結果が良かった水準を$A_{best}, B_{best}$とすると、結果が一番良い最適条件は$A_{best} B_{best}$になる
  • 最適条件での母平均の信頼区間
    • $\mu(A_i, B_j) = \bar{A_i} + \bar{B_j} – \bar{T} \pm t(\phi_e, 0.05) \sqrt{\frac{V_e}{n_e}}$
    • $n_e$は有効繰り返し数であり,後述する.

繰返しあり

交互作用のある$A, B$の水準の影響度を検定する.
各条件で$n$回検定するとすると、全部で$abn$回の実験をすることになる.
次の分散分析表を書けるように準備する.

要因平方和S自由度分散F比検定
要因$A$$S_A$$\phi_A = a-1$$S_A/\phi_A$$V_A/V_e$$F(\phi_A, \phi_e; \alpha)$
要因$B$$S_B$$\phi_B = b-1$$S_B/\phi_B$$V_B/V_e$$F(\phi_A, \phi_e; \alpha)$
要因$A\times B$$S_{A\times B}$$\phi_{A\times B} = (a-1)(b-1)$$S_{A\times B}/\phi_{A \times B}$$V_{A\times B}/V_e$$F(\phi_{A \times B}, \phi_e; \alpha)$
誤差$e$$S_e$$\phi_e = (a-1)(b-1)$$S_e/\phi_e$
$S_T$$\phi_T = abn-1$
  • データの構造式:$x_{ijk} = \mu + a_i + b_j + (ab)_{ij} + e_{ijk}$
    • 意味:データ=総平均+$A_i$の効果+$B_i$の効果+$A_iB_j$の相互作用+誤差
  • 平方和の計算法
    • 修正項(変動平均値)$CT = \frac{T^2}{abn}$
    • $S_T = \sum_{i=1}^a \sum_{j=1}^b \sum_{k=1}^n x_{ijk}^2 – CT$
    • $S_A = \sum_{i=1}^a \frac{T_{A_i}^2}{bn} – CT$
    • $S_B = \sum_{j=1}^b \frac{T_{B_j}^2}{an} – CT$
    • $S_{AB} = \sum_{i=1}^a \sum_{j=1}^b \frac{T_{A_i B_j}^2}{n} – CT$
  • 平方和同士の関係
    • $S_T = S_{AB} + S_e = S_A + S_B + S_{A\times B} + S_e$
    • $S_{AB} = S_A + S_B + S_{A\times B}$
  • 最適条件での母平均の信頼区間
    • $\mu(A_i, B_j) = \bar{A_i B_j} \pm t(\phi_e, 0.05) \sqrt{\frac{V_e}{n}}$

有効繰り返し数について

有効繰り返し数$n_e$については,田口の式を覚えると個別での暗記を回避できる.
次に,田口の公式とそれぞれの場合の有効繰り返し数を列挙する.

  • 田口の公式:$n_e = \frac{総データ数}{1+(推定に用いた要因の自由度の和)}$
  • 一元配置分析のとき
    • $n_e = \frac{an}{1+(a-1)} = n$
  • 二元配置分析のとき
    • $n_e = \frac{ab}{1+(a-1)+(b-1)} = \frac{ab}{a+b-1}$
  • 二元配置分析(繰り返しあり)のとき
    • $n_e = \frac{abn}{1+(a-1)+(b-1)+(a-1)(b-1)} = \frac{abn}{ab} = n$
  • 二元配置分析(繰り返しあり)で相互作用(A×B)が優位でないとき
    • 相互作用(A×B)が優位でないため,分母の(a-1)(b-1)が消える
    • $n_e = \frac{abn}{1+(a-1)+(b-1)} = \frac{abn}{a+b-1}$

回帰分析・相関分析

回帰分析とは,目的変数$y$と説明変数$x$のデータから、回帰式$\hat{y_i}=\alpha + \beta x_i$(線形回帰の場合)を求める分析のことである.

重要語句

  • 変数$y$:目的変数
  • 変数$x$:説明変数
  • 変数$\alpha$:切片
  • 変数$\beta$:回帰係数
  • メディアン線:$x, y$の散布図に中央値$Me(x)$と$Me(y)$を引くことがある

相関係数

相関係数 $r$は,2変数の比例関係の強さを-1~1で表す指標である.

  • 定義:$r = \frac{S_{xy}}{\sqrt{S_{xx} S_{yy}}}$
  • 各平方和
    • $S_{xx} = \sum_{i=1}^n(x_i-\bar{x})^2 = \sum_{i=1}^n x_i^2 – \frac{(\sum_{i=1}^n x_i)^2}{n}$
    • $S_{yy} = \sum_{i=1}^n(y_i-\bar{y})^2 = \sum_{i=1}^n y_i^2 – \frac{(\sum_{i=1}^n y_i)^2}{n}$
    • $S_{xy} = \sum_{i=1}^n(x_i-\bar{x})(y_i-\bar{y}) = \sum_{i=1}^n x_i y_i – \frac{\sum_{i=1}^n x_i\sum_{i=1}^n y_i}{n}$
  • 各分散(各平方和の公式より覚えやすいため,平方和は下記で分散を求めて$n$をかけて求める
    • $x$分散:$V_{xx} = \frac{S_{xx}}{n} = \frac{\sum_{i=1}^n(x_i-\bar{x})^2}{n} = E(x^2)-{E(x)}^2$
    • $y$分散:$V_{yy} =\frac{S_{xx}}{n} = \frac{\sum_{i=1}^n(y_i-\bar{y})^2}{n} = E(y^2)-{E(y)}^2$
    • 共分散:$V_{xy} =\frac{S_{xy}}{n} = \frac{\sum_{i=1}^n(x_i-\bar{x})(y_i-\bar{y})}{n} = E(xy)^2-E(x)E(y)$
  • 寄与率$R$:説明変数の目的変数への影響度合を表す
    • $R=r^2$(相関係数$r$の2乗

最小二乗法

最小二乗法は,実際の値$y_i$と回帰式を$\hat{y_i}=\alpha + \beta x_i$とした時の予測量$\hat{y_i}$の差を$e_i = y_i – \hat{y_i}$としたとき,
この残差$e_i$の平方和$\sum_{i=1}^n {e_i}^2$を最も小さくする$\alpha, \beta$で近似する手法である.

  • 公式:βを必ず暗記し,αは都度導出する
    • $\beta= \frac{{S_{xy}}}{S_{xx}}$ ベジータのSexyxx(ペケペケ)で覚える
    • $\alpha = \bar{y} – \frac{S_{xy}}{S_{xx}} \bar{x}$

回帰式の分散分析

回帰式を求める意味があるかを分散分析によって検定できる.
分散分析表を書けるよう準備する.

要因平方和S自由度分散F比検定
回帰$S_R$$\phi_R = 1$$S_R/\phi_R$$V_R/V_e$$F(\phi_R, \phi_e; \alpha)$
残差$e$$S_e$$\phi_e = n-2$$S_e/\phi_e$
$S_T$$\phi_T = n-1$

下記の関係式は,時短のため暗記または短時間で導出できるよう準備する.

  • 平方和分解:$S_T = S_{yy}= S_e + S_R$
    • 平方和は$y$の平方和$S_{yy}$と同じであることに注意
    • $S_T = \sum_{i=1}^n(y_i-\bar{y})^2 = S_{yy}$
  • 回帰平方和:$S_R = \sum_{i=1}^n(\hat{y} – \bar{y})^2$
  • 回帰平方和と平方和の関係:$S_R = \frac{{S_{xy}}^2}{S_{xx}}$
    • 導出:$S_R = \sum_{i=1}^n(\hat{y_i}-\bar{y})^2 = \beta^2 \sum_{i=1}^n(x_i-\bar{x})^2$
  • 回帰平方和と総平方和の比は寄与率になる
    • $\frac{S_R}{S_T} = \frac{{S_{xy}}^2}{S_{xx} S_{yy}} = r^2$

無相関の検定

相関係数が0でないと言えるかを検定する方法である.

  • 帰無仮説$H_0$:母集団の相関係数$r$は$r=0$
  • 対立仮説$H_0$:母集団の相関係数$r$は$r\neq 0$
  • 検定統計量 $t = |r| \frac{\sqrt{n-2}}{\sqrt{1-r^2}}$

検定統計量の導出

  1. 回帰分析での検定量$F$は、
    $F(1, n-2, \alpha) = \frac{V_R}{V_e} = \frac{S_R/\phi_R}{S_e/\phi_e}$
  2. 上記に代入して整理すると、
    $F(1, n-2, \alpha) = \frac{{S_{xy}}^2 (n-2)}{S_{xx}S_{yy}(1-\frac{{S_{xy}}^2}{S_{xx}S_{yy}})} = r^2 \frac{n-2}{1-r^2}$
  3. F分布とt分布の関係で、「$X$が自由度$\phi$のt分布に従うとき、$X^2$は自由度$(1, \phi)$のF分布に従う」がある
  4. この関係を用いて整理すれば、
    $t(n-2;\alpha)^2 = r^2 \frac{n-2}{1-r^2} \leftrightarrow t(n-2;\alpha) = |r| \frac{\sqrt{n-2}}{\sqrt{1-r^2}}$

参考文献

  • 教科書(日本規格協会)
  • 過去問題集(日本規格協会)