勉強法
例題などを用いて,次の状態を目指す.
- 各管理図が扱うデータ・使い分け・仮定している分布を理解している(まとめの表を参照)
- UCLとLCL(管理図上に引く線)の値を大方計算できる状態にする
- 係数などアルファベットを暗記する必要は全くない.
- UCL・LCLの計算は,中心線(CL)$\pm$係数×(標準偏差 or 範囲の平均)ぐらいのイメージを持ち,管理図ごとに使い分ける
– 例:$\bar{X}-R$だから$CL\pm係数×\bar{R}$だな,p管理図は2項分布だから$CL\pm3\sqrt{\frac{\bar{p}(1-\bar{p})}{n}}$)だななど
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管理図まとめ
次の表に,各管理図の種類ごとに,扱えるデータ.使い分け,仮定している分布をまとめている.
計数値の管理図については,不適合品数と不適合数の違いに注意してほしい.
- 不適合品数:不適合品の数、1製品1カウント
- 不適合数:1製品でも2箇所不適合がある場合は「2」とカウントする
管理図 | データ | 使い分け | 仮定している分布 |
---|---|---|---|
$\bar{X}-R$ 管理図 | 計量値 | サンプル数が少ないとき($1<n<10$) | 正規分布 |
$\bar{X}-s$ 管理図 | 計量値 | サンプル数が多いとき($n \geq 10$) | 正規分布 |
$X-Rs$ 管理図 | 計量値 | $n = 1$ | 正規分布 |
$Me-R$ 管理図 | 計量値 | 中央値で管理したいとき | 正規分布 |
np管理図 | 計数値(不適合品数) | $n$が一定 | 二項分布 |
p管理図 | 計数値(不適合品数) | $n$が変動 | 二項分布 |
c管理図 | 計数値(不適合数) | 範囲が一定 | ポアソン分布 |
u管理図 | 計数値(不適合数) | 範囲が変動(単位あたり) | ポアソン分布 |
管理図
工程が安定しているかを管理する手法である.
- 管理図上の線の定義
- 中心線(CL:Center Line)
- 上方管理限界(UCL:Upper Control Line)
- 下方管理限界(LCL:Lower Control Line)
- 群分け:データをいくつかのグループに分ける
- 群間変動:別の日のデータを見てばらつきを見る
- 群内変動:同じ日のデータを見てばらつきを見る
- 目的によって名称がある
- 解析用管理図:工程が管理状態かを判断する管理図、すでに集められたデータを用いる
- 管理用管理図:一度管理状態と判断した工程が現在も管理状態か(管理状態を保持できているか)を判断する管理図、解析用管理図に現在のデータを追加して作成されることが多い
管理図の安定状態の判断基準(JIS Z 9021)
安定状態の定義は次のようになる.
簡潔にすると「異常値、分布の偏り(外側と中心共に)、単調減少または上昇、データの発振」となる.
- 管理限界線をはみ出さない
- 中心線の片側に連続9点あるとき
- 6点が単調増加、単調減少しているとき
- 14点が交互に増減している
- 連続する3点中2点が$\pm 2\sigma$の範囲外にある
- 連続する5点中4点が$\pm \sigma$の範囲外にある
- 連続する15点が$\pm \sigma$の範囲内にある
- 連続する8点が$\pm \sigma$の範囲外にある
計量値に関する管理図
$\bar{X}-R$管理図
管理対象が計量値のときで、サンプル数が少ないときに使う管理図である。
- $\bar{X}$管理図
- データごとの平均値$\bar{X}$ をプロット、群間変動を見る図
- $CL$ = 平均値の合計/データ群の数
- $UCL = CL + A_2 \bar{R}$
- $LCL = CL – A_2 \bar{R}$
- $A_2$はサンプル数$n$などで変動する値
- R管理図
- データごとの範囲(ばらつき)をプロット、群内変動を見る図
- $CL = \bar{R}$
- $UCL = D_4 \bar{R}$
- $LCL = D_3 \bar{R}$
- $D_3, D_4$はサンプル数$n$などで変動する値
- 郡内変動と群間変動の関係
- 郡内変動は$\sigma_w = \frac{\bar{R}}{d_2}$で求まる
- $d_2$は郡内のサンプル数$n$で変化し、係数表から読み取る
- ‘w’はwithinの頭文字
- $\bar{X}$の分散は、郡内変動と群間変動の和になる
- 群間変動$\sigma_b = \sqrt{\sigma_{\bar{X}}^2 – \sigma_{w}^2/n}$
- 郡内変動は$\sigma_w = \frac{\bar{R}}{d_2}$で求まる
$\bar{X}-Rs(Rm)$管理図
サンプルが一つしか取れないときに使う管理図である。
サンプルが少量のときは$\bar{X}-R$管理図が用いられる。
- $\bar{X}$管理図
- 一点しかないので、各データをプロットしているだけ
- $CL = \bar{X}$
- $UCL = \bar{X} + 2.659 \bar{R}$
- $LCL = \bar{X} – 2.659 \bar{R}$
- サンプル数が一個のため、定数は決まっている
- Rs管理図
- 1点のみで範囲がないため、前後との差をプロットしている
- 1点目はない(前後との差のプロットだから)
- CL = 点の合計/(n-1)
- $UCL = 3.267 \times \bar{Rs}$
- LCLはなし
$\bar{X}-s$管理図
サンプル数が10個以上あるときに使う管理図。
※$\bar{X}-R$管理図は、サンプル数が少ないため範囲を取っている。
- $\bar{X}$管理図
- CL = 平均値の合計/データ群の数
- $UCL = CL + A_3 \bar{R}$
- $LCL = CL – A_3 \bar{R}$
- $A_3$で係数の番号が違うことに注意
- s管理図(小文字sは標本標準偏差のこと)
- データごとの標準偏差(ばらつき)をプロット、群内変動を見る図
- $CL = \bar{s}$
- $UCL = B_4 \bar{s}$
- $LCL = B_3 \bar{s}$
- $B_4$はUCLなので、$n$が大きくなるほど小さくなる
Me-R管理図
- Me管理図:中央値をプロットした図
- $CL = \bar{Me}$
- $UCL = \bar{Me} + A_4 \bar{R}$
- $LCL = \bar{Me} – A_4 \bar{R}$
- R管理図:$\bar{X}-R$と同様
計数に関する管理図
np管理図
サンプルの大きさが一定のときに、不適合品数($np$)を管理する図
- 適合品か不適合品かの二項分布を仮定
- 二項分布なので、$\sigma = n\bar{p}(1-\bar{p})$
- $CL = n\bar{p}$ (または不適合品数$np$の合計/群の数)
- $UCL = n\bar{p} + 3 n\bar{p}(1-\bar{p})$
- $LCL = n\bar{p} – 3 n\bar{p}(1-\bar{p})$
p管理図
不適合品率$p$を管理する図で、np管理図とは違いサンプルの大きさが一定でなくても有効。
- 適合品か不適合品かの二項分布を仮定
- 二項分布なので、$\sigma_p = \sqrt{\frac{\bar{p}(1-\bar{p})}{n}}$
- $CL = \bar{p}$
- $UCL = \bar{p} + 3 \sqrt{\frac{\bar{p}(1-\bar{p})}{n}}$
- $LCL = \bar{p} – 3 \sqrt{\frac{\bar{p}(1-\bar{p})}{n}}$
c管理図
不良点数を数え、不適合数(欠点数)を管理する図である。
ただし、群の大きさが一定のときに限る。
- 例:金属板の傷の数を数える場合、金属板の大きさがいつも同じとき
- 覚え方:Count (数える)の頭文字でC
- 不適合数はポアソン分布を仮定
- ポアソン分布なので、$\sigma = \sqrt{np} = \sqrt{c}$
- $CL = \bar{c}$ (不適合数の和/群の数)
- $UCL = \bar{c} + 3 \sqrt{c}$
- $LCL = \bar{c} – 3 \sqrt{c}$
u管理図
単位あたりの不良点数を管理する図である。
単位あたりなので群大きさが異なる場合も使用できる。
- 例:金属板の傷の数を数える場合、金属板の大きさが異なる時
- 覚え方:Unit (単位あたりで数える)の頭文字でU管理図
- ポアソン分布なので、$\sigma_p = \frac{\sqrt{np}}{n} = \sqrt{\frac{u}{n}}$
- $CL = \bar{u}$ (不適合数の和/群の数の和)
- $UCL = \bar{c} + 3 \sqrt{\frac{\bar{u}}{n}}$
- $LCL = \bar{c} – 3 \sqrt{\frac{\bar{u}}{n}}$
参考文献
- 教科書(日本規格協会)
リンク
- 過去問題集(日本規格協会)
リンク
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